位置情報

ソフトバンク基準点×GEONETで日本列島のひずみを高精細に可視化

「地震の発生を事前に知ることはできないか?」。最近は熊本地震をはじめ大きな地震が続いており、そう感じている方は少なくないのではないでしょうか。発生時期をピンポイントで予測することは今も困難ですが、地下で「ひずみ」がどこに溜まっているかを知ることは、将来の地震リスクを見積もるための重要な手がかりになります。2026年9月25日、東北大学と北海道大学の共同研究グループが、国とソフトバンクのGNSS観測網を統合し、このひずみをこれまでにない細かさで可視化したと発表しました。本記事では研究の概要に加え、位置情報ビジネスの視点から見たポイントと、データを実際に使う方法を解説します。


国と民間のGNSS観測網を統合した新研究とは

結論から言うと、今回の成果は民間の通信インフラが国の観測網を補完できることを示した点に大きな意味があります。研究グループは、国土地理院の電子基準点網「GEONET」(全国約1,300カ所)と、ソフトバンクの独自基準点(全国3,300カ所以上)のデータを組み合わせました。なお、GNSSとはGPSやみちびきなど、衛星の電波で位置を測る仕組みの総称です。

3,606カ所の観測点で「ひずみ速度場」を推定

解析には2019年11月〜2023年12月の観測データを使用しました。まず品質を確認して3,606カ所の観測点を選び、そのうえで日本列島全域のひずみ速度場を推定しています。ひずみとは、地殻がゆっくり変形することで蓄積される偏りのことです。つまり、内陸地震が起こりやすい場所を知るための重要な手がかりになります。

成果は2026年9月22日付で国際学術誌Earth, Planets and Spaceに掲載されました。詳細は東北大学のプレスリリース(PDF)で確認できます。

出展:北海道大学

GEONET単独では見えなかった構造が浮かび上がった

これまでGEONETによる解析では、観測点の間隔に限界がありました。そのため、局所的なひずみの集中を十分に捉えきれないという課題があったのです。しかし今回は観測点の密度が大幅に高まり、より小さなスケールのひずみ集中構造を捉えることに成功しました。特徴的な集中が見られた地域は次のとおりです。

  • 新潟-神戸歪集中帯
  • 北海道北部
  • 山陰地方せん断帯
  • 奥羽脊梁山脈周辺

これらの地域では、地震活動や火山の分布と対応するひずみの集中が確認されています。

なぜ携帯キャリアの基準点が研究に使えるのか

理由は、ソフトバンクの基準点がもともと高精度測位サービスのために整備されたものだからです。同社は誤差数センチのリアルタイム測位サービス「ichimill(イチミル)」を提供しています。その測位を支えるために、全国へ独自基準点を展開してきました。

産学連携コンソーシアムが橋渡し役に

2022年8月、東北大学はソフトバンクとALES株式会社の協力のもと「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム(CSESS)」を設立しました。国内の12研究機関18部局が参画し、地殻変動や水蒸気量、電離圏など幅広い分野でデータの活用を検証しています。今回の研究も、この枠組みを通じてデータ提供を受けたものです。

このデータは誰でも使える?利用方法を整理

結論として、論文とGEONETのデータは誰でも利用できますが、ソフトバンクの観測データには条件があります。用途ごとに整理すると次のとおりです。

  • 論文(研究成果):オープンアクセスのため誰でも閲覧可能
  • GEONETの観測データ:国土地理院の電子基準点データ提供サービスから取得可能(利用登録でID発行)
  • ソフトバンク基準点の観測データ:研究・学術機関は著者への要請で入手可能。またALES株式会社からの購入も可能
  • リアルタイム高精度測位:ichimillとして商用契約で利用可能

たとえば開発者がまず試すなら、GEONETのRINEX形式データ(30秒間隔)から始めるのが手軽です。一方で、ドローンや建機にセンチメートル級の測位が必要な場合は、ichimillのような測位サービスの契約が現実的な選択肢になります。

エムベースからひとこと

通信キャリアの基準点網が、測位サービスの枠を超えて地球科学や防災にまで活用され始めました。位置情報に携わる立場として、非常に興味深い動きです。高精度な位置データは、取得して終わりではありません。どう組み合わせ、どう見せるかによって、その価値は大きく変わります。エムベースではRTK-GPSを活用した高精度位置情報サービスの開発や、地図上での可視化システムの開発を手がけています。

位置情報関連の開発でお悩みの方は、ぜひエムベースの位置情報開発サービスをご確認ください。

まとめ

国と民間のGNSS観測網を統合したことで、日本列島のひずみをこれまで以上に細かく把握できるようになりました。この成果は防災研究にとどまらず、民間の位置情報インフラが社会基盤として活用される可能性を示しています。まずは公開中のGEONETデータや論文に触れ、自社サービスでの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

  • GEONET約1,300カ所+ソフトバンク基準点3,300カ所以上を統合し、ひずみを高解像度で可視化
  • 新潟-神戸歪集中帯などで、地震・火山活動と対応するひずみ集中が判明
  • 論文とGEONETデータは誰でも利用可。ソフトバンクのデータは研究機関向け提供または購入

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